この休日、家族で羽田空港に出掛けた。半年前から予約していた日本航空の工場見学に参加するためだ。
間近で旅客機が見られるということもあり、飛行機大好きの僕は息子よりも楽しみにしていた。デジカメを首からぶら下げ、やる気満々だった。
空港からモノレールに乗り、一駅隣りの整備場へと向かう。
大きな建物の入り口で受付をし、入館証を受け取る。入館証にはJALのロゴが入ったネックストラップが付いていた。ストラップは記念に貰えるという事だったので早速それを首にかけた。
その時、受付の男性職員と目が合った。その目に一瞬だけ微かな曇りを感じた。ん? と思ったが次の瞬間には元のにこやかな笑顔に戻っていた。どうやら気のせいみたいだった。僕ら家族は中に入った。
建物の中には広くて綺麗な展示ルームがあり、整備士や空港スタッフなどの仕事内容がわかりやすく紹介されていた。それらを眺めながら進むと、制服体験コーナーがあった。パイロットや客室乗務員の制服を着て写真を撮れるのだと言う。「子供用も大人用もありますよ」とスタッフさんが言ったので、僕ら家族は早速参加した。制服を着て僕のデジカメをスタッフさんに渡す。
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その時、デジカメを受け取るスタッフさんの表情がほんの少しだけ固まった。んん? と思ったが、すぐに元の笑顔に戻った。一瞬だったし特に気にする事もなさそうだった。
その後は航空教室があり、飛行機についての解説が終わると次はいよいよ実際に格納庫へと向かう。参加者はJALのロゴが入ったヘルメットを被り、年輩の案内員に連れられ、教室を後にする。
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格納庫内はひとことで言えば広かった。中に入るとその広さが実感できた。
この日は一機の旅客機が整備されており、案内員が言うには小型機だったが、目の前でみると迫力があった。
この案内員はなかなかの子供好きのようで、息子や他の子供達に色々と話し掛けながら、面白おかしく解説をしてくれる。ちょっとした裏話なんかも挟んでくれて、とても聞き応えがあった。
案内員は旅客機の先端部分を示し「ここにはどんな役割があるのかわかりますか?」とクイズを出した。子供達はみな首をひねっていた。答えがなかなか出なかったので「レーダーです」と僕が得意気に答えた。案内員は「正解。気象レーダーが入っているんです」と言った。そして僕の方を見た。
その時、やはり一瞬だけ動きが止まった。んんん? と思ったが、僕の背後に見える滑走路でちょうど大型旅客機が着陸したので、多分そのせいだと思った。
彼は参加者を滑走路の前へと案内した。僕らは格納庫の前で着陸する旅客機を眺めた。写真を撮るには最高の場所だった。僕は首からぶら下げていたデジカメを構え、着陸する旅客機を捕えた。自分で言うのもなんだが迫力のある写真が撮れた。僕は自慢するために、妻にデジカメを見せた。
その瞬間、妻の表情が固まった。みんな一体なんなんだ? 僕のなにがおかしいんだ? そう思って手にしていたデジカメを見た。
そして気付いた。デジカメに付けていたネックストラップに「ANA」の三文字が……僕は慌ててデジカメをポケットに隠した。
工場見学って面白い。妻も息子もとても楽しんでいた。それに、こんな無粋な僕にだって職員の方々はしっかりと対応してくれるのだから。
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